「あ、ごめん。これからカラオケ行こうって、誘いのメールが来てるわ。私……行くね」
 
これ以上、2人が仲良くしているのを見るのが辛かった。メールなんて来ちゃいなかった。

「ああ、そうなの。残念」
 
ちっとも残念じゃないくせに、伊津くんは眉をハの字にする。
 
南生と2人きりになりたくてたまらないくせに――。
 
バンッ、と私は力強く南生の背中を叩いた。

「ここはおごってね、おねーちゃん」
 
私はガタッと席を立った。

「ちょっと……玖生!」
 
私は紅茶が半分以上も残っていたまま、店を出た。
 
砂糖を入れない紅茶のせいで、私の口の中は苦かった。
 
ひどくひどく渋くて――しょっぱい涙となった。
 
泣きたくなんか、なかった。けれど、止まらなかった。
 
涙は次から次へとあふれ出していた。