青色のゴンドラに、吸いよされるかのように、私と森村くんはそうして滑りこんだ。
 
彼は、ぎゅっと、堅く、私の手を握っていた。
 
何故だか私は安心しきっていて、透き通ったこころで景色を眺めることができた。
 
お日様の光が、すぐ傍の住宅地やビル、街に降り注ぐ。
 
それがミニチュアのように、ゴンドラが上昇する度に段々と遠ざかって行った。
 
私たちは、空へと向かっているのだ。

「神様って、いっつもこんなビジョンで私たちを見ているのかしら」
 
まるで子どもじみた問いが胸に浮かび、口に端を発していた。

「どうだろうな。死んだじーちゃんやばーちゃんもこんな目で俺らを見てんのかもね」
 
彼も5歳児が口にするような台詞を吐いた。

「不思議……。高いところなのに、怖くない」
 
私は切り取られた長方形の窓に手をかけた。

「空に吸い込まれて行くみたいだわ」
 
何か、答えを期待して、狭い真向かいに座る森村くんの顔を見た。
 
吊り目気味の、森村くんの瞳は優しく瞬いていた。
 
ぎゅっ……と握り続けていた彼の拳から、力がこもって応対してくれる。