彼のその純朴な様相に私のこころはちょいと動いた。
 
ああ、このひとは美しいこころを持っている。美しい空を知っている。それを、私に見せたいと言う。
 
――ならば、見ようじゃないか。ぴん、と私は思った。

「解った……行く」

「そうこなくっちゃ!」
 
私の反応に、森村くんはぱちん、と指を弾く。

「観覧車のゴンドラ、落下しないわよね」
 
私が胸の前で握りこぶしをつくって恐る恐る尋ねると、カカカ、と彼は顎を高らかに突き上げて笑った。

「落ちるわけないだろ。もし仮に、落ちたとしてもいいだろ」 
 
私は何となく頷いた。
 
彼のその言葉に、いつも抱いていた観覧車のゴンドラが落下するという、恐怖のイメージがかき消された。
 
ふとそちらを見遣ると、観覧車はゆっくりと、時をかき混ぜるかのように廻り、廻っていた。