「随分ダイタンだな、お前」
 
私の人差し指の腹に留まった彼の涙を、ぺろっと舐めてみた。
 
ほんの少し、海の味がした。
 
そうか、空気は海の味がするのか、と感じた。
 
そもそも雲だって、海からの水蒸気でできているのだ。
 
うん、と私は納得した。

「変な奴」
 
彼は苦笑して言う。そして、私の肩を抱き寄せた。

「――あの~、何ですか?」
 
平べったい、薄っぺらい彼の胸の中で私は尋ねた。
 
河辺で寝そべって、抱き合っている2人。傍から見れば、いちゃついているカップルに見えるだろう。

「何、って。意味はない」

「じゃあやめて」

「ドキドキしない?」
 
私は自分の胸音を尋ねてみる。