森村くんに連れてこられたのは、私の高校からほど近い、大きな川の流れる川べりだった。
 
この川があったのは知っていた。けれどここへ辿り着く前に、私は手前の駅から電車に乗って帰宅していたのだ。
 
通学路の延長上にちょいと寄り道すれば、こんな素敵な場所があったのに、私は気づかずに毎日を過ごしていたのだ。
 
今日は文化祭の日に“じゃあ、明後日に”と云われ、放課後に森村くんと待ち合わせをし、約束どおりにここへ空を見に連れてこられたのだった。

「どうしてここは……こんなにも」
 
空が綺麗に見えるのだろう。語尾は言葉にせずとも、彼には伝わったようだ。

「周りに高い建物がないからじゃないかな」
 
大の字に寝転んでいる私の横で、同じ姿で大地に身を預けている森村くんは云った。

「もっと違う理由がある気がする」
 
私は反論した。

「三途の川の向こう側だからかな」
 
彼はさらっと言いのける。