いかん。このままでは追いはぎに遭う。そう察知した私は、

「私、これから放送室当番だから」

と云ってくるりと踵を返し、ひらりと逃げた。
 
好奇の目に晒されるのはごめんだ。それに私は、本当にこれから放送室へ行ってアナウンスをする役目を任されていた。そんなところ――。
 
ぐい、と不意に腕を掴まれた。

「紗生」
 
振り向くと私と同じ顔がそこにはあった。
 
末っ子の玖生だった。玖生だけじゃない、南生もそこにいた。

「おー。ドッペルゲンガー」
 
声を上げたのは、玖生たちと一緒にいた背の高い男の子だった。
 
身体の線が細くて、目も細い。
 
男子はもう一人いた。目鼻立ちがきりりとした、いわゆるハンサムな子。

「――誰?」
 
私はきょとんとして、玖生に聞く。

「こっちが森村くん。こっちが大地」