「・・・麗子?」



れいこ・・・?見上げるとそこには黒いスタイリッシュなエプロンが似合った美人がいた。



短く切りそろえられた栗色の髪と、大きく開けられた二重の瞳。


すっと通った鼻と、シャープな輪郭は凛々しさもあって。



だけどペンを持つ細い長い指は華奢で壊れそうなほど繊細。




一言で表すと、「美 人」が一番合うと思った。



「やっぱり!伊吹よね。可愛い子連れて何してんの?・・・というか、まだそんな恰好してんのね」




「その話はやめにしよっていったじゃない!メールでも書いたでしょ、結菜ちゃんのいる前で――」



負けず嫌いの先輩は、相手がああいえばこういうんだけど。



「・・・結菜ちゃんの前で。その話はやめにしよって、その子が結菜ちゃん?」




「言ったろーが!」



「あはは、ごめんスルーしてた。大事な本文だけしか読まないの、あんたも一緒でしょ?」




一緒でしょ?のところに、長い関係を匂わせて。



・・・先輩が、今まで見たことないような顔で怒ったり、笑ったり、あきれたりしてるから。




だからなのかわかんないけど、胸がちくんとした。




「――ちゃん、結菜ちゃん?」



不意に先輩に呼ばれて意識が元に戻る。



「あ、はい」



「元気ないわよ?」


心配そうにこちらを見つめる先輩が、腹立たしかった。



・・・誰のせいで。・・・・って、先輩のせいなの?



「食欲ないんで・・・やっぱ、帰ります」




ガタリと席を立とうとしたけど、先輩が不審そうにこちらを見る。





「嘘つけ、嬉しそうにフェデリーニ頼んだくせに」



「・・・そこ真顔で言うセリフじゃないです・・・・」