『あっ、やばいフェードアウト・・・』
『ちょ?先輩!?』
そういえばそのまま倒れられて、ああ、この人無茶してたんだと悟った。
帰りのタクシーに無理矢理ひこずりながら乗せて。
先輩の家まで送って看病したんだっけ。
――
「ちょーっと・・・・考え事しながら運転って危ないのよ・・・」
「・・・ああ、昔の先輩の失態を」
「失態ですってえ・・・?ゴホッ、そんなのゴホッ」
「ほら、2年前の」
「ああ、あの日もだったっけか・・・」
バックミラー越しに見える先輩は懐かしそうに窓の外をみてた。
「世話焼かして、弱いところばっかで」
「え?」
「ごめんな」
・・・・この人は。
なんだこの人は。
「あれ、なんか赤い・・・」
「気のせいです。で、どこのビルに行くんですか」
「ああ、○×コーポレーション・・・」
「私一人で行ってくるんで先輩は待っててください。その後に休みもらいます」
こうなったらヤケだヤケ。
倒れられる前に看病する。
「何言ってんのよ「私一人でそれぐらいできます」」
ミラー越しに先輩を見据える。
「・・・・わーったわよ。」
先輩は負けたとでもいうように両手を上げてそのまま横に倒れた。
「ちょっときつかったし・・・」
「自販機でなんか買ってきます」
「水」
「わかりました、あと」
「な、「私のセーター、使ってください。寒いって程じゃないけど、地下に止めるから」」
「・・・・・」
「あ、見えました」
「・・・・・」
「よし、空いてるところ・・・「あそこ」」
先輩が指をさすところに車を止める。
セーターを脱ぎ、先輩にかけてやる。
「じゃあ、行ってきます。良い結果を楽しみにしててください」
「はいはい。」
・・・一人で交渉。始まりました。