夕方、備え付けのシャワーを浴びて、わたしはTシャツにショートパンツ、
留美ちゃんはノースリーブのワンピースに着替えた。

りゅうさんも直ちゃんも、Tシャツとひざまでの短パンになってコンロの火をおこしている。

バーベキューの用意もしてきたんだそうだ。

道理で、大きなクーラーボックスが積んであったわけだ。

海水浴場に隣接したバーベキューの施設で、
こんな酔狂なことをする人間は私たちだけだった。

地元の人が多いから、夕飯はきっと家で食べるんだろう。

コンロの中でくすぶっている炭を、直ちゃんが一人であおいでいるそばに、
そっと近寄った。

「手伝おうか?」と聞くと、

「ええで。熱いからあっちおり。」と言ってくれる。

確かに熱かったけど、わたしはそこを離れなかった。
久しぶりに直ちゃんの近くにいると、やっぱりとても落ち着く気がして、
章子さんごめんなさい、と心の中で言いながらその横顔を見ていた。

「みーちゃん。この前ごめんな。」と直ちゃんが火を見ながら言う。

「なんで?直ちゃん、何にも悪いことしてへんやん。
わたしの方が子どもみたいに泣いたりして。ごめんね。」

「いや。」

まだ夕方で、空気が赤く見えるほど夕焼けがきれいだ。
こんな夕方が、昔にもあったような気がして、とても懐かしい気分になった。

「なあ、直ちゃん。
夕日ってこんなとき、梅干みたいに見えるねんで。知ってる?」

そう言うと、直ちゃんはびっくりしたみたいに顔を上げた。

「梅干?」

「そう。海に沈んでいくときな、ぶよぶよ溶けていくみたいに見えるねん。」

ちょっとの間、それを想像した直ちゃんが、
体を少し折るようにして笑い出した。

「そっか、梅干かあ。」

「うん。」

「梅干なんか持って来てないぞ。」

留美ちゃんと一緒に、車から野菜を運んできたりゅうさんが、
なんのことかわからないという風に言ったので、
二人ともよけいにおかしくなって笑い転げてしまった。