淡路島に入ると、直ちゃんが運転を代わることになった。

そっか。運転もできるんだなあ。
大人なんだなあ。

いまさらながらそう思う。

留美ちゃんも免許を持っているので、「疲れたらわたし、変わりますよ。」と言ったけど、
りゅうさんがすごい疑わしげな目でじろっと見て、
「いや、今のところは大丈夫。」と言った。

淡路についてからは、島のまわりとぐるっとまわる下道を通って、
海水浴場についた頃には、すっかり夏らしい暑い一日が始まろうとしていた。

向こう岸に四国が見える海水浴場には、地元の親子連れがちらほらいるくらいだった。
りゅうさんいわく、ここは穴場なのだそうだ。

きれいな砂浜と遠浅の海で、波は穏やかだった。

プレハブの更衣室で留美ちゃんと着替えて出て行くと、
二人はもうとっくに外にいた。

直ちゃんがこっちを見て、ちょっとまぶしそうな表情をしたのがわかる。

ふんだ。もう子どものみーちゃんじゃないんだからね。

でも、りゅうさんが持ってきたいるかの形をした浮き輪なんかを膨らませはじめると
とたんに子どもに戻って、久しぶりの海におおはしゃぎしてしまった。

さすがに昼近くになると、人影も増えてくる。

海から上がると、「腹減ったやろ。」とりゅうさんが、おにぎりを出してくれた。

そのとき、当然のようにいやみもついてきた。

「まあ、女の子と行くゆうても、みーちゃんやしな。
自分で作ったほうが安全やからな。」

そりゃあ、わたしたちだって何か作ってこようかとは思ったけど、
どうせりゅうさんが用意するだろうし、
けちをつけられるのがオチだと思ったので、
凍らせてきたジュースやお茶を渡した。
ちょうどいいくらいに溶けている。

おなかいっぱいになったわたしと留美ちゃんは、
しばらく砂に寝転んで、
「あー、生き返るなあ。」なんて言い合った。

こうやって空の下にいると、自分のくだらない悩みなんて消えてしまうようだ。

「お前ら、女の皮をかぶったおっさんみたいやな。」と言われたけど、
とりあえずは女と認めてもらったことでよしとする。