「そろそろ試験も終わったんちゃうかなと思って。」とりゅうさん。

「終わったけど。」

「ちゃんとできたか?」と、意外に優しい声。

「できたよ、多分。」

「まあ、お前の学校で留年したらほんまにあほやから、いくらなんでも大丈夫やろ。」

大きなお世話じゃ。

「ほんで、何?いやみ言うのに電話させたん?」と思い切り冷たく言うと、

「海行こ。」と、突然話題が変わった。

「はあ?」

「海や、海。夏といえば海に限るやろ。」

「りゅうさんと?」もしかして、二人で行こうとか言うんじゃないだろうな。それはいやだ。

「なんや、二人で行きたいか?それやったらもっといいとこあるからそっちにしよ。」
と、どこまでも上手で切り返してくる。

「直ちゃんも?」と聞くと、

「そやで。なお、今度二日休みとれるから、夕方もゆっくりできるしな。」と言う。

ゆっくりできてもしょうがない。
直ちゃんには会いたいけど、どんな顔をして会えばいいのかわからない。

わたしが黙ると、
りゅうさんが、ほんの少しだけまじめな声になった。

「なお、みーちゃんがああいう帰り方したから、すごい気にしてるねん。
口には出さんけど、飯の量が減ったしな。
おれのプライドがぼろぼろや。」と、そこで言葉を区切って、
少し話ししたらどうや?それとも口もききたくないか?と言った。

口をききたくないなんて、思ってない。
だから、「…ううん。」と言うと、

「次の火曜、開けとけ。」と、海に行くことが決定してしまった。

それから、「もう一人、誰か誘われへんか?」と聞いてきた。

もうお前らのお守ばっかりするのはいややからな。

そう言うので、留美ちゃんを誘ってみようと思った。

「ほんなら、みーちゃんの水着姿、楽しみにしてるで。」と言い残して
電話は切れた。