声がうまく出なくて、ただ母を見つめると、
その顔にありありと嫌悪感が浮かんでいるのを見て、
やっぱり自分が出来損ないであることを実感せざるを得なかった。

帰宅途中の近所の人たちが、見てはいけないものを見るようにして通り過ぎる。

そんな中、今度は父が息子の手を引いて、自分と高さが変わらなくなった肩を抱いた。

「お前もまだまだ子どもやな。」と言って、
自分に似ている顔で笑ったので、ちょっと気が楽になった。

「直人はお母さんと家に入っとり。」と言って、
家族を近所の目から隠すと、
吉崎と立ったままで話をしていた。

窓から見ていると、父は何度も先生に頭を下げていたので、
よかった、と思った。