神大というのは、神戸大学のことだ。
国立大学で、偏差値も高い。
わたしなんか、逆立ちして鼻血をだしてみたところで
とうてい入学なんてできない。

わたしは、実を言うと直ちゃんが大学に行かなかったことを
不思議に思っている。

直ちゃんたちのおうちは教育熱心な家庭で、
直ちゃんも、2つ年上のお兄さん、綾人さんも、
小学校の頃からたくさん塾に通っていた。

綾人さんは早稲田大学に合格したと、いつかの年賀状に書いてあったし、
直ちゃんもきっと有名な大学に通うんだろうと思っていた。

もちろん、どんな学校に行っても行かなくても、
直ちゃんに変わりはないし、
むしろ、自分の道を見つけた直ちゃんを、わたしは尊敬している。

「じゃあ、高校が同じなの?」

二人の接点なんて、他に思いつかない。

「そういうわけじゃないねんけどな。」

直ちゃんの言葉はなんだか歯切れが悪い。

「出会い系や。」

二本目のたばこに火をつけながら、りゅうさんが言った。

「はあ?」

「出会い系。知らんのか?」

「知ってるけど…。」

「うそやで、みーちゃん。もうほんま、こいつうそばっかり平気でつくから、
信用したらあかんで。」

結局ほんとのことは教えてもらえなかった。
今度は直ちゃんが、ちょっとわざとらしく話題を変える。

「みーちゃん、見て。明石大橋。
みーちゃんがおるころ、まだ出来てなかったやろ。」

「うん。きれい。」

高台にある学校から下ると、きれいな瀬戸内の海が目の前に広がる。
その海に、大きなつり橋がかかっていた。

わたしがこっちに住んでいた頃はまだ、橋げたくらいしかできてなかったので、
完成した姿を見るのは初めてだ。

「夜になったらもっときれいやで。ライトアップするからな。
はよ彼氏つくって連れてきてもらい。」

あほ、ばか、死ね。

りゅうさんって、なんでこう一言多いんだろう。