「そんなだまされるようなことないよ。
付き合ってるとかじゃぜんぜんないし、
こっちのこと、いろいろ教えてもらってるだけやから。」

なんで直ちゃんとのことを言い訳しないといけないんだろう。
そう思うけど、口が勝手に言葉を吐き出していく。

「そうやったらいいけど。」

江里子ちゃんもきつい言い方だったことを反省したのか、
ややトーンを落として言った。

「あそこの家、もうめちゃくちゃやもん。
三浦くんだってすごい遊んでるって聞いてるし。」

そんなのうそに決まってるのに、
なぜだか心がどんどん冷えていく。
顔はずっと笑ったままだ。

「えー、ほんまに?」なんて、まぬけな言葉が出るもんだから、
樹里ちゃんと川本さんが、安心したみたいに直ちゃんの話を始めた。
確か、樹里ちゃんの真ん中のお姉さんは直ちゃんのひとつ下だったはずだ。

「三浦さんかっこいいもんな。
中学でも人の彼女に手を出したりしてたんやろ。」

「ほんでぼこぼこにされたとかって聞いたで。」

「うわー、悲惨やな。けどそれはやっぱりあかんよな。」

そんな話聞いてない。
直ちゃんがそんなことするわけない。

否定しなきゃいけないのに口が開かない。
どうしてこんなこと聞かなければいけないのか。
どうして女の子って、こんな話を楽しそうにできるんだろう。

「ほんまに?ぜんぜん知らんかったわ。」

そう言うのが精一杯だ。

うそに決まってる。
わたしの知ってる直ちゃんはそんなことができるような人じゃない。
信じろ。

もう聞きたくなんてないのに、話はまだおさまりそうにない。

「高校のときも女関係で問題起こしたんやろ。」

「おばちゃん、それで自殺しはってんで。
夜中に救急車来たからびっくりしたわ。」と江里子ちゃん。

うそ。
おばさんは元気だってつい最近きいたばかりだ。

やっぱりうそだったんだ。
誰かが最後に、「そんな訳あるか」って、きっと笑って終わるんだ。