その日、直ちゃんたちはうちに泊まった。
あの狭い家の中で、よくあれだけの人数が眠れたと思う。
もしかしたら、大人たちは眠らなかったのかもしれない。

次の日には電気とガスが復旧した。
直ちゃんたちも家に帰った。

それにしても、わたしたちの地域はほんとうに恵まれていた。
火事も、ちいさなのが数件、全壊した家はほとんどなかったからだ。

テレビの画面では街中が燃え、
黒い煙がもくもくたっている。

これが、車で数十分のところで起きていると想像するだけで怖かった。

学校も休みになってしまい、
大人たちは水の確保やら家の修理やらで忙しい。

冬休みが終わったばかりなのに、また長い休みが始まったような感じだ。
休みとはいえ、今度はいつ始まるかわからない、憂鬱な気分だったが。

そのお休みの間、直ちゃんがしょっちゅううちに来るようになった。
お母さんがそうしなさいと言ったそうだ。

どういう事情なのかはわからなかったけど、
わたしにとってはありがたいことだった。

その間、わたしは直ちゃんにくっついてすごしていた。

「美代子、大きくなったら直ちゃんのお嫁さんにしてもらい。」と、
母がふざけて言うと、わたしはものすごいうれしそうな顔をしたらしい。

直ちゃんはどう思ってるんだ、と父があとで母に真剣にきいたというから、
笑える話だ。

いや、わたしとしては笑い話で終わらせたくはないんだけど。