伊藤美代子。18歳。
今日から神星学院大学短期大学部の学生になる。
そんな大事な式なのに、あくびがでて仕方がない。

昨日の夜、結局遅くまで眠れなかったせいだ。

あれからシャワーを浴びて、髪を巻いて、
あんまりしたことのないパックまでしてしまった。

それから今日のことを考え始めると
なんだかどきどきして眠れなかったのだ。

ああ、ばかみたい。

あくびをかみ殺している間に式は終わって、
講堂の出口に人が殺到し始めた。

神星大学には大学部と短大部がある。
入学式は合同なので、広い講堂の中は新入生でいっぱいだ。

それにしてもたくさんいるなあ。

この中の何人くらいと友達になれるんかなあ。

そんなことをぼやっと考えていると、
大学部の席のほうから留美ちゃんが人波をかき分けながらやってきた。

「おーい、美代ちゃーん。疲れたよう。」

留美ちゃんは、同じ高校から入学する友達だ。

といっても、高校三年間は同じクラスになったこともなく、
話をしたこともなかった。
それでも、何度か一緒に受験やら、合格発表やらに通ううちに、
友達といっていいくらい仲良くなっている。

今日も朝は待ち合わせをしてこの講堂に入った。

進学クラスだった留美ちゃんは、高校の制服をまじめに着ている
どちらかというと地味な子だったが、
こうやって私服になると大人っぽい美人だってことがわかる。
化粧も上手だ。

「もう眠くてさ、別に出んでもいいかなって感じやったな。」

「わたしも、途中で寝そうやったわ。」

しばらくその場で話してから、人の少なくなった出口に向かった。

「美代ちゃん、これからどうすんの?
わたし、サークルとか見ようかなって思ってるねんけど。」

そうきかれたので、わたしはこれからの予定を留美ちゃんに話した。

「えー、いいなあ。
直ちゃんって例の彼氏やろ。」