ええって、別にたいしたことじゃないし。
何もされてるわけじゃないし、とりあえず警察にでも言うてみる。

これがもし、わたしのことだったりしたら、留美ちゃんはきっとそんな風には言わないだろう。
わたしのこと、というより、他の人のことだったらものすごく熱心に助けてくれようとするのに、自分のことは自分でなんとかしなくては、と留美ちゃんは考えているようだった。

りゅうさんともずいぶん仲良くなったように思えるのに、
そういうことを相談するのはなんだか弱みを見せるみたいでいやだという。
別に彼氏ってわけじゃないし、ただの知り合いにそんなん言われても困るやろ。

そうかなあ。

関西弁には「いっっちょかみ」という言葉がある。
何かトラブルがあると、ひとつ自分もかんでみる、首をつっこんでみる、という性質のことだ。

わたしの母もそうだが、りゅうさんも典型的な関西人で、
ただの知り合いだったとしても、困っている人がいたら何かしらおせっかいを焼きたがるタイプだと思う。
それに何より、ただの知り合い、と彼が認識しているとはわたしには思えないんだ。

留美ちゃんがシャワーを浴びているすきに、わたしは直ちゃんに電話をかけた。
もう部屋にいて、珍しく一人であるらしかった。

「みーちゃん?ちょうどよかった。」

聞いてみると、一人でいるとものすごくひまで、何をしようか迷っていたのだそうだ。