「ちょっと、留美ちゃん、それってあぶなくない?」

わたしの就職活動のことなんて、こうなったらあとまわしだ。

「うーん。やっぱりそうかなあ。」

おとなしそうやから、何かあったら殴ったろと思ってるねんけど、とサンドイッチをかじりながら言う。

「あかんて。気持ち悪いやん!」

「そうやねんよ、気持ち悪いねん。」

「家、知られた?」

留美ちゃんの住んでいるところは、学生がたくさん住んでいるコーポタイプのマンションで、わたしのところみたいにオートロックなんてついていない。

「いや、とりあえずはついてくるなって言って、
昨日は駅で立ち話して帰らせた。」

「それで、帰ってくれた?」

「まあな。でも、そのあと怖くてしばらくコンビニでうろうろしてもたわ。」

ほんま、時間の無駄やで。

留美ちゃんはそう言うけど、怖いに決まってる。

その人は、もしかしたら留美ちゃんのことをずっと見ていて、
いろいろ知っているつもりなのかもしれないけど、
留美ちゃんはその人のことを何も知らない。

好意を持っているなら、どうして、きちんと話をして、仲良くなって、安心させてあげないんだろう。
こんな素敵な女の子を、どうして怖がらせたりしたいんだろう。
わたしは男の人の気持ちがわからない。

「警察に言うたら?」

わたしなりに考えたつもりだったけど、

「それも考えたけど、実際何をされたってわけでもないしなあ。」と留美ちゃんはまだ困惑気味だ。

「でも、パトロールとかしてくれるかも。」

「そやけど、ずっと見ててくれるわけじゃないやろ。」

「引っ越す? うちにしばらくおったら?」

「うーん。 時々泊めてくれる?」

「もちろんいいよ。いつでも来て。」

そう言うと、留美ちゃんは、
「わたしはごはん作ってあげられへんけど、ごめんな。」と笑って言った。