四月になる頃には、いくつか書類を会社に送ってみたけど、
返ってくるのはひとつもなかった。

樹里ちゃんはもうあきらめた風で、「派遣かバイト。」と手をひらひらふっている。

中には大学部への編入試験の用意を始めた子もいて、
それぞれに、一年後に向けての道を手探りで探し始めていた。

「派遣かあ。」

それも考えている。
それなりにお給料をもらえるみたいで、家賃や生活費くらいならなんとかなりそうだった。

今、どれくらい電気代や水道代、電話代を払っているのかを計算してみて、
改めて、それを出してくれる両親に感謝している。

これを、全部自分でやってみるとどれくらい大変なことなのか、
うすぼんやりとだけど想像がつく。

直ちゃんは高校を出てからずっとそうなんだよなあ。

おじさんが、最初の二年は生活費を出してくれたそうだけど、
「かなり困ったときに手をつけた」だけで、あまり使わずにとってあると言っていた。

最初、美香さんがもっときれいな部屋を探してきてくれたけど、
将来的には自分で家賃を支払うつもりだったので、今の部屋に落ち着いた、とも言っていた。

えらいよなあ。

ちなみに、りゅうさん作るご飯の費用は全部りゅうさんの負担だそうだ。
その代わり、光熱費や水道代、家賃はもちろん全額直ちゃんが支払っている。
わたしたちも、ご馳走になるときは食費くらい払う、と言うのだが、
りゅうさんは、「おれと同じくらい食べるようになったら払ってもらう。」と無理を言う。
だから、なるべく飲み物とか、ちょっとした食べ物を持っていくようにしている。

今まで、わたしにとってお金とは、
親からもらって、服や化粧品、雑誌なんかを買うものだったけど、
実際に生活をするということを考えると、
とても大切で、大変なもののように思えてくるのだった。