あれ、と思って顔を見ると、
留美ちゃんのきれいな眉が困ったように歪んでいて、

「普通の人はひくやろ。そんながつがつ勉強したいって、おかしいと思わん?」とわたしに聞く。

ああ、こういうの、男の人だったらぎゅって抱きしめてあげたいんだろうな、と思うほど留美ちゃんがかわいくて、とうとう声を上げて笑ってしまった。

それから、「普通の人やったらな。」と言うと、
「まあな。」と留美ちゃんも一緒に笑い出した。



直ちゃんは自分の仕事を見つけてがんばっている。
資格を取って、お店に入ればそれでいいというものではないらしく、
毎日課題をこなしているようで大変だと言う。

留美ちゃんが配膳のアルバイトをしているのは、きついけど、他の仕事に比べて時給がいいからだそうだ。
そうやって、少しでも将来親に負担をかけないようにしたいとお金を貯めているらしい。

まわりにいる人たちが、そうやって着実に進んでいることを考えると、
そういう人たちと知り合えたことが、わたしみたいな人間にはもったいないくらいのことだと思う。

負けないようにしないとな。

そう思いながら、あせる気持ちが心の中にわいてくる。

わたしのやりたいことってなんだろう。
わたしができることってなんだろう。

もうそろそろ19歳になろうというのに、まともにそんなことを考えたことなんてなかったから、
そのツケが一気にまわってきたように思える。

それでも、「自分のことなんやから。」と、北風に向かっていくように答えた留美ちゃんの横顔を思い出すと、
そこから逃げるわけにはいかないと、ぎゅっとこぶしを握りしめた。