マンションの前まで送ってもらったときにはもう日が暮れかけていた。

「へえ、いいとこ住んでるな。また遊びに来たるわな。」

お前は二度と来るな。

なんでも、りゅうさんは直ちゃんの部屋に入り浸りだそうだ。
直ちゃんは高校を出てから、神戸駅の近くに部屋を借りて一人暮らしをしている。
なんでも、家賃が安い場所だそうで、
「みーちゃんは絶対に夜は来ないように。
どうしても来るなら迎えに行くから一人では歩かないように」というところらしい。

帰る前に直ちゃんは、お母さんみたいに、
戸締りをちゃんとするように、何かあったら電話するようにと
何度か言った。

二人を乗せた車を見送って、自分の部屋へ帰る。

朝、ここを出たときはあんなにうきうきした気分だったのに、
なんだか想像とあまりにも違う一日だった。

元気のなくなった花を洗面台につけ、
スーツを抜いでTシャツに着替える。
かばんを開けると、携帯が光っていて、メールが届いていることを知らせていた。

りゅうのやつだったら無視してやる。

そう思ったが違った。
留美ちゃんからだ。

「直ちゃん、めっちゃかっこいいね。がんばれ」

最後にハートが飛んでる絵文字がついていて、
それをみたとたん、一日の疲れがどっと押し寄せてきた。