食事を終えて、食器は明日片付けることにした。

まあ、飲んで飲んで、なんて、りゅうさんが直ちゃんにビールを勧めている。

「おれが章子さんにふられて、よっぽどうれしいみたいやな。」と直ちゃんが皮肉に、そしてどこか真剣に言うと、

「うれしいはずやってんけどな。
おれも飲みたい気分やねん。」と、りゅうさんの答えは屈折したものだった。

わたしはコップいっぱいだけ付き合って、
あとはお茶を飲みながら二人の姿を見ていた。

まだ終電まで時間があったから、帰ったほうがいいかとも思った。
二人ともアルコールが入っているし、今までもさすがに泊まったことはなかった。

それに今日は、二人でこっそり守ってきた秘密の恋のお葬式みたいなものだったから、
わたしみたいな人間がいないほうがいいような気もしたのだ。

それでも、りゅうさんがわたしを呼んだのは、
せめて一人だけでも、彼ら以外の人にも一緒にこの時間をすごして欲しいと思ったのかもしれない、とも考える

迷っていると、

「おい、お前、今日はちゃんと付き合え。」と絡み上戸のおっさんみたいにりゅうさんが言う。

「みーちゃん、眠たくなったら寝たらええよ。
おれもりゅうも大丈夫やから、今日はおって。」と直ちゃんも言った。

「うん。」

直ちゃんがそういうなら、と落ち着かないお尻をもう一度カーペットの上におろした。

そうするうちに、
直ちゃんが章子さんと付き合っていた頃の話をぽつりぽつりとし始めた。

思い出すように、確かめるように、
きっと今までも誰かにきいてほしかっただろうことを、
ゆっくり語り始めた。