そう考えながら、おびえた猫のように心を尖らせるその子を見ていた。
ああ、この子は直人くんと同じやな。
ただ、直人くんは全部自分に押し込めて、まわりにはただ流されるようにしていた。

それで、つい、怖いと思ってしまった。
もうこれ以上、誰かの人生を狂わせるのはいやだった。
考えすぎなのはわかっていたけど、それでも怖いという気持ちが消えない。

主任が購買からお茶の入った紙コップを3つ買ってきてくれて、

「まあ、一回ご両親と話せなあかんな。」と言った。

章子さんも早くその子を母親の元へ返してしまいたいと思った。

だから、「お母さんに電話してみるから、今日はいったん帰り。」と言った。

すると、「そんなことせんでええ。ただの冗談やから。別に本気じゃない。」と言って、
家にはぜったいに連絡しないように念を押して帰っていった。

帰らせるべきではなかった。

首をつっていたそうだが、もしかしたらそれも何かのパフォーマンスのつもりで、
ほんの間違いで死んでしまったのかもしれないと考えることがある。