レジでは直ちゃんが三人の分を支払ってくれて、わたしたちは店の外に出た。

「直ちゃん、」

と、お財布を出そうとするわたしに、

「いいって。みーちゃんのお祝いなんやから。
誘ったのはこっちやし。」

父でもない男の人に、こうやっておごってもらうの、初めてだ。
うれしい。

「ありがとう。ごちそうさま。」と頭を下げる。

「そんな、こんなんでそんなことされたら申し訳ないわ。」

と、直ちゃん。

タイミングよく、もう一人もわたしに並んで言った。

「なおタン、ごちそうさま。」

「お前は違うやろ。」

りゅうさんからはしっかり回収している。

りゅうさんは、家庭教師のアルバイトをいくつかかけもちしているそうだ。
さすがは神大生。
この人がどんな顔で教師なんてしてるのかと思うと、不思議な気持ちになる。

今日も夜はバイトやけど、もうちょっと遊ぼ。
そういって、車を運転するりゅうさんはすっかり元通りのりゅうさんだ。

いったいこの人は何が言いたかったんだろう。

わたしは、まだその真意がわかりかねていて、
ぐずぐずした感情が消えない。
そう大して痛まない、だけどいつまでもその感触に慣れない、
小さなとげが手のひらに刺さったときのような気持ちだ。

直ちゃんが、あのお店の友達のことや、月ごとにデザートが変わること、
それがおいしくて、デザインもよくて、勉強になることを話してくれたが、
返事が上の空になってしまっていた。

一号線をさらに東へ走って、車は三角屋根の、ガラス張りの建物の前に着いた。