「おれはずっと、なおの何がいいんか知りたかった。
あんなやつのどこがええねんって思ってた。

お前が変に思うくらい、おれはあいつのことを気にしてて、
もしかしたらあいつがうらやましかったんかもしれんな。」

鍋に油をひいてたまねぎを炒め始める。
ジュウという音が部屋に響いた。

「お前にはそれで迷惑かけたな。」

たまねぎが透明になるまで炒めるのが味の深みを出すコツ、と言った後でそう言ったので、

「まあな。」と答えた。

それから、「留美ちゃんには秘密にしてるから。」と付け加えてあげた。

すると、あの子、変わってるな、黙っとったらかわいいのにな、と苦笑している。

りゅうさんの写真を最初に見たとき、留美ちゃんも同じようなことを言って笑い転げていたのを思い出したけど、
それも当分秘密にしておこうと思った。

「…あいつはなおも捨てるんかな。」

透き通っていくたまねぎを見ながら、りゅうさんはそう言って、
それからしばらく二人とも無言のまま、カレーを作ることに専念した。