デザートを持ってきてくれた人は、厨房スタッフの格好をしていた。

わたしのことをにこにこしながらじっと見て、
「はい、これ、おまけね。」と、
ケーキとアイスクリームを出してくれた。
アイスクリームはわたしにだけだ。

「え?なんで?ええのかな。」

「ええで。食べ。あれ、おれが専門学校行ってたときの友達。
ぜったいなんか勘違いしとるな。」

直ちゃんは、高校を出てから2年間、製菓の専門学校に通っていた。
その時の友達なんだろう。

ちょっとごめんね、と言って、直ちゃんは席を立って
厨房のほうへ歩いていく。

しばらくその背中を、りゅうさんは見ていたが、
わたしのほうをみてにやにや笑いながら、

「勘違いやって。」

と、皮肉っぽく言った。

きっとこの人には、最初からわたしの気持ちなんか見え透いているんだろう。
ばかなことばかり言っているが、頭のいい人なんだってことはわかる。

「…別にいいもん。」

アイスにスプーンを入れながら、すねるようにわたしが言うと、りゅうさんはジャージのポケットから携帯電話を取り出した。

「な、みーちゃんの番号とアドレス教えて。」

「いや。」

「なんで?なおのこと、一番知ってるのはおれやで。
いろいろ教えてあげれらると思うけど。」

「…。」

「おれと友達になっといてぜったい損はないって。な。」

「…。アドレスだけ。」

よし、と言って、りゅうさんがわたしに携帯の画面を差し出した。
画面にりゅうさんのアドレスがある。

うながされて、わたしはかばんから携帯を出して、そのアドレスに一通メールを送った。本文なしの空メールにするつもりだったけど、「あほ」と打ち込んでから送信した。