それから、時々考え込んでいることが多くなったので、さりげなく自分に相談するように頼んだが、章子さんからその話が出ることはなかった。

思い当たることがあって、「もし、学校におれみたいなのがおるんやったら、おれ、ぶっ飛ばしてやるから。」と言ってみた。

そうしたら、「自分がまともな生徒やなかったって、一応自覚はあるんやな。」と返されてしまった。

なあ、章子さん。
おれはそんなに頼りないか。
やっぱり子どもなんか。

そう思うが、口には出せないまま時間が過ぎていく。

幼馴染のみーちゃんには、章子さんとのことを話すことができた。
最初はびっくりしたみたいだったけど、理解をしてくれるようになった。

これまで、自分たちの恋愛を知っているのは両親と美香さん、
それから隆司くらいだった。

両親は、とっくに別れたものと思っているみたいだし、
こうやって誰にも知られないままで、いつか消えてしまうのではないかと考えることがあったから、理解者が増えるのはうれしいことであった。

みーちゃんの友達という女の子も部屋に来るようになった。
きれいなのにすましたところのない、むしろちょっと変わった子で、
隆司と仲良く怒鳴りあうのを見るのも楽しかった。

章子さんと付き合い始めてからいいことばっかりやな。

章子さんはおれと付き合っていいことあるか?

それくらいはいつか聞いてみようと思っているうちに、
神戸の街には六甲から降りてくる、冷たい北風が吹くようになった。