「ここのケーキ、めっちゃおいしいで。」と言い、
確かにおいしかったけど、
わたしは世界一おいしいケーキを他で知っているから、そんなものがかなうわけはない。

「みーちゃん。
ぼんやり誰にでもついていったらあかんで。
みーちゃんは素直に人のことを信じてしまうところがあるから、
ろくでもない男にひっかかることになる。」

と、おじさんみたいな口調で直ちゃんが言うと、

りゅうさんと留美ちゃんが、練習でもしたみたいにぴったりのタイミングで直ちゃんの方を向いた。

「当たっとる。」と異口同音に言うので、
不機嫌な直ちゃんを除いた三人で大爆笑してしまった。

そんな風に、直ちゃんはわたしの大事な幼馴染でいてくれたけど、
時々電話を持ってうれしそうに外に出て行くのをわたしは知っていた。

小さい子どもが甘いお菓子を口に入れてもらったみたいな、
ふんわりと幸せそうな顔を見るたびに胃がぎゅっとなった。

あせるな。あせるな。

未来なんてどうなるかわからないんだから。

そう思ったのはただの負け惜しみで、
本当に気まぐれな未来に振り回されることを感じていたわけではなかった。

松本くんからは何度かメールが来たが、
そのうち回数が減り、間隔が開き、
最後にはぱたっと途絶えてしまった。

彼にとってはその程度の相手だったようだ。