【那奈side】

キーンコーンカーンコーン。


学校の終了を知らせるチャイムが鳴り、生徒が一斉に帰り始める。


『那奈ー! 帰らないのー?』


私に向かって名前を呼んで近づいてくる女の子。


『……』


私はそれに気が付かなかった。


窓の外をみて頭の中がボーッとしていた。


『……那奈ー?』


目の前で手を揺らしてきたとき、初めてハッと我に返った。


『あ……絵梨香ごめん』


話を聞いていなかった。いや、聞こえていなかった。


『大丈夫?』


『……うん』


力無く返事を返す。


『また隼人君のこと?』


『……』


その名前が出たとき、目から涙が出ていたことに気付いた。


涙がほっぺを伝って、手の甲に落ちた。


『隼人……』


泣いてる私をみて、彼女は私にこう言った。


『泣いても隼人君は戻ってこないんだよ』


ーーー戻ってこない。


その言葉が心にグサりと刺さった。


わかってはいた。


隼人がもう戻ってこないということが……。