『ちょ……これどこに向かってるのですか……?』
手をとられてからしばらく無言のまま歩いて初めて話しかけた。
『着けばわかる』
『……はぃ』
会話が終わっちゃった。
また無言の時間で気まずいな……。
どうしたらいいだろう……。
そんなことを考えていると……
『着いたぜ』
男の人が立ち止まった先をみて私は口を開いた。
『え……?』
私が着いたところ、それは小さな公園だった。
それも見覚えのある公園だった。
『この公園って……』
隼人先輩の家の近くにある公園だ。
なんでこんなところに私を……?
『ゆう兄ちゃん!!』
誰かを呼ぶ声が聞こえた。
公園の中から聞こえた声の方向を向くと小さい幼稚園生くらいの子がこっちに向かって走ってきた。
『よっ。元気してたかチビ共』
“チビ共”?
『うん! 元気!』
私はそこでまた驚いた。
何の恐怖心も無く笑顔で返事をしている子供たちと、さっきまで怖いと思っていた男の人が笑顔で子供と話している姿をみて驚きを隠せなかった。
『ちょっと待ってな』
男の人は目の前にいる子供たちの頭をポンと叩いて、私の手を引っ張って公園の外にある一軒の屋台に向かっていった。
その屋台にはたこ焼きと書かれていた。
たこ焼き屋の前に着くと男の人が口を開いた。
『おばちゃん、いつものやつ2つちょうだい』
いつものやつ?
この人いつもここに来てるのかな?
頭の中でいろいろ考えているとたこ焼き屋のおばさんが笑顔で口を開いた。
『遊ちゃん今日も来てくれたのかい! いつもありがとね』
ゆう兄ちゃん……ゆうちゃん……。
ゆう……さんっていうのかな?
『ちゃんづけやめてくれよ! 子供じゃねぇんだから』
ここでも笑いながら言葉を返す男の人。
『ほらよ』
そう言ってたこ焼きの入った袋を1つこっちに向けてきた。
『いいから受け取れ。ここのたこ焼き美味いぜ』
返事をする間もなく、私の手を掴んで袋からたこ焼きを出して渡してきた。
『あ……ありがとうございます』
『あら、ゆうちゃん彼女さんかい? 随分と可愛い子じゃない!』
えっ……
『ち…違います!』
『ちげぇよ!』
2人の声が重なって否定をする。
私が彼女なわけないからっ!
何故か恥ずかしくなって顔を赤らめる私。
『ほら、お前もさっさと戻るぞ』
男の人はおばちゃんにお礼を言って私と公園に戻ろうとした。
『あ……待ってください!』
私もたこ焼き屋のおばちゃんに頭を下げて急ぎ足で後を追いかけた。
この人、悪い人じゃなさそう。なにより先輩と重なるところが結構あって未だに驚いてる自分がなんか変な感じ。
この感じはなんなのだろう……。