気品のある凛々しい容貌。



優雅な立ち居振る舞い。



穏やかな物腰。



高位の貴族の優秀な子息たちが通う学園を、首席で卒業した明晰さ。



芸術を愛する、優しく美しい心。





どれをとっても、若い女性たちを夢中にさせるに充分だった。





王室主催の舞踏会のおり、貴族の令嬢たちから熱い眼差しを注がれるレイモンドを見るたびに、エレティナの胸はざわめいた。





王宮の庭園で、薔薇の植木に隠れて追いかけっこをした、あの夢のように幸せな日々の思い出。



それが、エレティナの胸から離れなかった。





自分の恋心に気づいたとき、エレティナは、その思い出ごと、許されざる想いを胸の奥底に封じ込める決意をした。





その決意は、レイモンドの婚約が発表されたとき、さらに強まった。