俯いたまま、エレティナは鏡台の引き出しを開けた。




中には、一冊の詩集と、額に入った一枚の絵が隠してあった。






文学を愛し、絵を得意とするレイモンドが、五年前、エレティナの十歳の誕生日に贈ってくれたものだ。






百年ほど前の時代に、愛に生き、愛に死んだという激情の詩人の詩集。




そして、レイモンドが描いたエレティナの肖像画。






(あのころは、まだ私はほんの子どもだった。


何も思い煩うことなく、ただレイモンドに夢中だった………)






三つ歳上のレイモンドは、エレティナにとって、何もかもに秀でた自慢の兄のような存在だった。





その気持ちが、いつの間に変質してしまったのか。





エレティナは、自分の宿命を思いながらも、レイモンドに恋心を抱くようになっていた。