「………セリン」




「はい」





エレティナは奥の間に控えていたセリンに声をかけ、もう休むと伝えた。






「疲れたので、誰も入れないでちょうだい。


着替えは自分で済ませるから………」






「はい………」






セリンは少し眉をひそめたものの、黙ってエレティナを部屋に送り届け、一礼して立ち去った。






部屋に入ったエレティナは、瀟洒な飾りのついた鏡台の椅子に腰掛けた。





どこか蒼ざめた自分の顔に溜め息を洩らし、深く項垂れる。






(……大丈夫だと思ったのに。


この想いは胸に秘めて、死ぬまで隠し通して、この想いと共に天に召されるつもりだったのに………)






そんな決心も、レイモンドをこの目で見た瞬間―――



風に吹かれる満開の花びらのように、はかなく脆くも崩れ去ってしまった。