「殿、いかがなさったのですか?」


 周囲のお付きの者たちが不審がる。


 「この者たちに活動停止処分を下し、主催者は連行するはずでは?」


 「無用だ。捨て置け」


 「は?」


 「特に問題はないと、今この目で判断した。私は城に戻る」


 「殿!」


 その日冬雅は帰路に着いた。


 だが数日後。


 近しい側近のみを伴い、冬雅は司祭に謁見を申し入れた。


 司祭の言葉を理解できないので、通訳を用いての対話。


 ほどなく冬雅は、キリストの教えに夢中になっていた。


 司祭の言葉は温かで柔らかく、冬雅の乾いた心を満たしていった。


 「司祭さま。この罪深き身である私を、神はお赦しになるのでしょうか」


 「神は救いを求める者が差し伸べた手を、払いのけることはありません」


 やがて冬雅は密かに入信した。


 キリシタン禁止令により、入信が幕府に伝わったら福山藩取り潰しになりかねない時代だったにもかかわらず。


 冬雅は秘密裏に、キリスト教の保護を続けた。