(そういうことだったのか)


 全ての謎が解けたような気がした。


 福山冬雅の人生を振り返った時に何気なく感じた、不思議な共鳴。


 福山冬雅や月光姫のゆかりの地に降り立った時の、言葉にはできない懐かしさ。


 そして。


 どんなに愛しても、愛する者はいつもすり抜けていってしまう。


 ひと時だけ愛する者をこの腕に抱くことはできるのだけど。


 やがて真に愛する者の元へと、旅立っていってしまう。


 月光姫も。


 真姫も。


 そしていつか、美月姫も……?


 (そんなつもりではなかった)


 圭介は418年前の自身の記憶をたぐり寄せる。


 (姫を愛らしいと思った。それだけのはずだったのに)


 周囲に煽られる形で、冬雅は姫を弟・冬悟から奪い取った。


 嫌がる姫を、無理やり。


 (福山家当主としての面子もあり、俺は後には引けなくなった)


 激しい抵抗に遭い、弟はついに謀反に手を染めた。


 (心のどこかでは、気づいていたのかもしれない。その段階で止めていれば、冬悟は命を落とすことはなかったのかもしれない。だけど俺は止めなかった。みすみす冬悟を死に追いやった……)


 なぜか。


 姫を手に入れたかったから。


 それには弟が邪魔だったから。