「殿、私は今回の騒動の責任を取りまして、辞職させていただきます」
突然赤江が辞職を申し入れた。
「なぜこのような時に」
驚く冬雅に、赤江はこう答えた。
「殿の留守中にこのような謀反が起きてしまいました。これも私の力不足が原因です。この責任を取りまして、私は職を辞して田舎に引きこもらせていただきます」
「……」
冬雅は赤江の真意を察した。
冬悟を陥れたのは赤江だから。
裁判の際に冬悟が無実を主張して、赤江に詰め寄るだろう。
当然背後に冬雅の関与も疑われてしまう。
(それを避けるために、赤江はしばし身を隠す気だ……)
それが分かっていながら冬雅は、赤江の申し出を受け入れた。
もう後には引けない……。
そして判決が下される。
「全ては……。天と赤江だけが存じております」
「そなたにも言い分があるのなら、一応聞いてやろう」
「重ねて申し上げますが、真実を知るのは天と赤江のみです」
その時家臣の安藤が、再審査を願い出た。
「今しばらく、再度冬悟さまへの尋問をお続けくださいませ。赤江は殿の関心を得るために、冬悟さまを陥れようと」
「その言い方はまるで、私が内心喜んでいるかのような言い方だな」
「いえ、そんな」
言い訳も弁明もなぜかしない冬悟。
冬雅は弟に死罪を命ずるしかなかった。
福山家および領内の秩序を守るため。
自らの権力保持のため。
そして・月光姫を手に入れるため。
突然赤江が辞職を申し入れた。
「なぜこのような時に」
驚く冬雅に、赤江はこう答えた。
「殿の留守中にこのような謀反が起きてしまいました。これも私の力不足が原因です。この責任を取りまして、私は職を辞して田舎に引きこもらせていただきます」
「……」
冬雅は赤江の真意を察した。
冬悟を陥れたのは赤江だから。
裁判の際に冬悟が無実を主張して、赤江に詰め寄るだろう。
当然背後に冬雅の関与も疑われてしまう。
(それを避けるために、赤江はしばし身を隠す気だ……)
それが分かっていながら冬雅は、赤江の申し出を受け入れた。
もう後には引けない……。
そして判決が下される。
「全ては……。天と赤江だけが存じております」
「そなたにも言い分があるのなら、一応聞いてやろう」
「重ねて申し上げますが、真実を知るのは天と赤江のみです」
その時家臣の安藤が、再審査を願い出た。
「今しばらく、再度冬悟さまへの尋問をお続けくださいませ。赤江は殿の関心を得るために、冬悟さまを陥れようと」
「その言い方はまるで、私が内心喜んでいるかのような言い方だな」
「いえ、そんな」
言い訳も弁明もなぜかしない冬悟。
冬雅は弟に死罪を命ずるしかなかった。
福山家および領内の秩序を守るため。
自らの権力保持のため。
そして・月光姫を手に入れるため。