「…ってそんなことはどうでも良いのよ。」
好きな理由は分かったとしても、行動に移さな
きゃ意味がない。
そしたら斉藤は、まるで私の心を読んだかのよ
うにおずおずと口を開いた。
「分かってますよ~…。だから今回、ダメ元で五十嵐さんに頼んだんですよ…。これでも結構勇気出したんです…。」
項垂れるように愚痴をこぼす。
「だいたい、そんなにうじうじしてるのも原因じゃないの?地味なのはしょうがないとして…。」
「さらっと酷いこと言った!?」
「その前髪も鬱陶しいっ!!!」
鼻に掛かるまである長い前髪をぐいっと上げて
みる。
「うっぎゃあ!?いきなり何するんですか!?」
「…斉藤、前髪上げたほうがいいと思う。」
今までほぼ半分、前髪のせいで隠れていたけれ
ど実際に見てみるとそこまで悪くない顔をして
いる。
「五十嵐さんって美人の割に容赦無いですね…。」
「何か問題でも?」
「いや、というか自分が美人だって認めるんだ…。」
ボソボソと何か言ったのでギロリと睨みつける
と、斉藤は慌てて目を逸らした。
「そういうことで明日から前髪上げてきなさいよ。」
「そんな…無理ですよ!急に!!」
「何が無理なのよ?」
「いや、だって…慣れてないし…。」
「じゃあずっと地味なままなの?少なくとも今のままじゃ振り向いて貰えないよ。」
私のセリフと同時に下校のチャイムがなる。
「まあ今日はいいや。また明日ね。」