「斉藤ってさ、案外普通の人なんだね!こうやって話す前はずっと地味で暗い奴かと思ってたよ!」
「あはは、それクラスの友達にも言われましたよ。」
奈津と斉藤は思ったよりも早くに馴染めて、
あっという間に仲良くなったみたいだ。
「次って5組は体育だったよね?」
「あ、そうだった。じゃあ先に行きますね。」
「走っちゃうと横腹にくるよー!」
奈津の声が聞こえなかったのか、急いで走った
せいで、いたたと言って横腹を抑えて歩いて行
った。
「私達もそろそろ行こうか。」
よっこらせと立ち上がって、学習室を出る。
さっきのおばさん臭いよ、という会話をしな
がら教室に戻っていたら、廊下でバッタリ遠藤
正樹と会ってしまった。
「正樹くん…!」
嬉しそうな奈津とは反対に、遠藤正樹にあまり
いい印象を持てない私は、早くその場を立ち去
りたくて仕方がなかった。
「奈津ちゃんと五十嵐さん。教室ではお弁当食べてないの?」
「うん、旧校舎のほうで食べてるんだ。」
「そんなことろで?どうして?」
「斉藤と一緒に食べてるの!他に食べる人がいないらしくて。」
「へえ、そうなんだ。」
何か嫌な予感がする。
「ねえ奈津、早く教室戻ろう…。」