「ねえ春子、お弁当持ってきたのは良いけど、旧校舎まで来てどうするの?」
「いいから、いいから。」
着いたのは昨日約束した学習室。
「こんなところで食べるの?」
「まあまあ、とにかく入ろう!」
ブツブツ文句を言う奈津の手を強引に引っ張っ
てガラリとドアを開けると、一足早く着いた斉
藤が同じく弁当を持って突っ立っていた。
「五十嵐さんと…奈津さん!?」
扉の開いた音でこちらに気付いた斉藤が目を丸
くして驚いていた。それもそのはず、まさか片
思い中の相手が来るなんて思ってもみなかった
だろう。
「もしかして…斉藤、梓?」
「はい、そうです…!」
奈津と話してることに緊張しているのか、斉藤
の声が少しつっかかっていた。
「髪の毛切ったんだね!うん、そっちのほうが全然いいよ!」
「あ、ありがとうございます…!」
褒められたせいか、照れながらも嬉しそうな表
情になった。
「でもなんで斉藤がこんなところにいるの?」