これは5月中旬あたりのこと。
「好きなんです!!!」
突然呼び出されたかと思ったらいきなり告白。
それは甘い恋の始まり。
なんてものはこの私、五十嵐春子には存在しなかった。
生まれ持ったこの美貌、はっきり言ってしまえば私には厄介でしかない。捨てれるものならとっくに捨てているだろう。
どうせこの人も顔だけなんだろう、さっさと振ってしまおう。
「五十嵐さんの友達の、奈津さんのことが!」
ん?
「今、貴方なんて言ったの?」
「えっと、、い、五十嵐さんの友達の、聖川奈津さんが好きだと…」
じゃあ何故私に?
「そんなの本人に告れば良いじゃない」
こんなんじゃまるで、自分が期待してたみたいで馬鹿みたいだ。
「は、恥ずかしくって…」
「はあ?」
思わず声が大きくなってしまった。
相手もびびってますます弱々しくなる。
「だって、俺、奈津さんとそんな話したことな
いし…いつも一緒にいる五十嵐さんなら協力してくれるかなって」
なんじゃそりゃ。
「協力してくれませんか!?お願いします!五十嵐さんしかいないんです!」
「…」
しばらくの沈黙が続く。
さて、どうしようか。
断わる理由も特にないし、第一このままじゃ告るに告れないだろう。
断ろうかと思ってた矢先に相手が口を開いた。
「無理ならいいんです、諦めます」
「いや、別に無理ではないけど…」
「本当ですか!?!?」
「あ、いや…」
「ありがとうございます!!!」
半ば強引に決まってしまった。
しかも相手は、これでもかと言うほど喜んでいる。
ここまで来たら流石の私も断りにくい。
面倒だから、ちゃっちゃっと終わらせよう。
「あー貴方、名前なんて言うの?」
「斉藤梓です!よろしくです!」
これが私と斉藤梓の出会いだった。