一旦外に出て、如何にもお使い行ってきたようなふり。
武から受け取った品物を持って再び家に入る。
「はーい、買って来たよ~」
「あ、早かったわね」
こうやって美保は日々姉や母親にこき使われ、その裏をかきながらせっかくの休日を休むことなく暮らしているのである。
そんなある日のこと。
例のようにぐうたらしていると、
「美保ー!!ちょっと来なさーい!!」
例によって姉に目を付けられる。
(……またか)
「なーにー?」
「買い物行って来てー!!」
「はーい!」
(さ~てと、連絡しよっかな)
携帯を取り出し、連絡をしても出ない。
(は?)
何度もかけるが一向に繋がらない。
(チッ使えないヤツ)
ガチ舌打ちしつつ、これからどうするか考える。
武の安否などこれっぽっちも考えない。
頭を占めるのはどうすれば自分が行かなくて済むかということだけ。
自分が行くのはとってもめんどくさいのでなんとしてでも避けたい。
しかし、自分にこれ以上の切り札など───。
「………あった……!」
早速電話をかける。
『……は~い?』
「あ、私だけど、今ひま?」
『………ひまじゃない』
「ひまでしょ?」
『ひまじゃ……』
「ひま、でしょ?」
『………ひまでぇ~す』
「────と────買って来て」
『え~………』
「なんか言った?」
『……なんでもありましぇ~ん』
「ありがとう♥」
全ての人の秘密や弱みを握っている美保、恐るべし。