喋ることすらめんどくさいと感じる彼女は基本無口。
しかし人前では全くの別人。
めんどくさがりな彼女は素の自分を知られることを酷く嫌う。
故に人前ではお喋りないらない話ばかりするうるさい女を演じる。
周りから見れば何も考えていないバカな女に見えるだろう。
しかし彼女は誰よりも計算高い女。
いらない話ばかりするのも、わざと核心に触れさせないため。
わざとらしく見えるのも全て演技に他ならない。
それは家族だろうと例外ではなく。
いや、家族が一番美保のことを理解していないかもしれない。
それほど美保の演技力は素晴らしく、女優顔負けの変貌ぶり、鋭い頭の回転の早さだった。
並外れた観察眼と洞察力。
生まれ持った才能によって、瞬時に相手にとって一番いい性格を完璧に再現して見せる。
本当の自分を見せれる人なんて世界中に一人もいない。
それ以前に見せるのが嫌い。
それらのことから、一番寛げるのは学校でもなく、家でもなく、自分の部屋だけだった。
部屋から1歩外に出ると常に気を張ってなければいけない。
いつどこで誰と出くわすか、分かったもんじゃないのだから。