階段を下りていると向かいからスーツを着た男性が二人階段を上がってきた。
「(本当に今日は来客が多いな・・・。)・・・こんにちは。」
社交辞令としていったん立ち止まり相手に挨拶をすると相手側からも「こんにちは。」と返答が来た。よく見ると日頃自分がいる部署に営業でやってくる大嶋さんだった。
「大嶋さんじゃないですか!お疲れ様です!」
「おぉ!黒澤ちゃん!さっき黒澤ちゃんのところに行ったけど見かけなかったから休みかと思ってたぞ。」
「書類を配り回ってたんですよ!!」
大嶋さんはちょっと大柄の中年のおじさんで見かけは少し強面であるがとても気さくで明るく面白い人で、新人だった頃の私にも営業で来るたびに声を掛けてくれたりととても面倒見のいい人であるため大嶋さんが来るたびに私はつい話し込んでしまうほどである。
「大嶋さん今からどこに向かうんですか?」
「3階病棟だな!」
「うわっ!今私行ってきちゃいましたよ!すれ違い!!」
「お前俺のこと好きすぎるだろう~。だめだぞ。俺には可愛い嫁さんがいるんだから。」
「じゃぁ嫁の晴香さんをください。大事にするんで。」
「馬鹿野郎ー!!今俺の嫁っていっただろうが!!他を当たれ。」
おぉ!大嶋さんのツッコミ相変わらずナイスタイミング!と今日も大嶋さん自慢のお嫁さんをネタにしてじゃれていると大嶋さんの後ろにもう一人スーツを着た人が立っていた。
私の視線に気づいた大嶋さんは「あぁこいつな。」といって少し体をずらした。そしてさっきより見やすくなった相手の顔を見て言葉を失った。
(・・・・・え?)
私と目線が合った相手も気づいたのか驚いた顔になりお互いに言葉を失う。
そんな二人の状態に気づかず大嶋さんは話を続けた。
「今日は営業と新人の挨拶回りしてるんだよ。今度からこいつもここの病院の担当することになったから黒澤ちゃんも覚えておいてあげてな。名前は・・・」
「(・・・城村 一弥)」