好きでもないのに。



好き、って。











この世で
一番、残酷な嘘。







思ってもない事を
軽々しく口に出来る奴、


俺、嫌いだから。













「………冬美、?」





冬美の髪を撫でながら
ゆっくりと
話を切り出す。









「……なんですか?」





だから、
そんな嘘を吐く前に。










「別れよっか、」











精一杯の
俺の、優しさ。





これ以上、俺を
好きになる前に。






な、優しいだろ?



って。





心の中では、


また、
叩かれるのかな、て。












「………零センパイ、」










叩かれる時は
避けない、て
決めてんの。







最後に叩くくらい、
いいかな、て。










「私、零センパイのこと
大好きでした。
……今まで、
ありがとう
ございました。」






あ、やっぱりね。


冬美は叩かない、か。






背中を見送る。

これも、俺の精一杯。





泣いているのか、
鼻をすする音が
少し遠くに聞こえる。











背中に向かって。




ごめんな、て。




もっと……
かわいくなれよ、って。





最後はまるで
保護者みたいに。












俺はいつ、
泣けるような
恋、できんだろな。







………なんて。



馬鹿みてぇ、