笑って、お礼を言う倖は、どこか寂しそうだった。


最近家に来る倖は元気がない。



なにかあったのか??


「お前、何かあった??」



これが、俺から話しかけた最初の言葉。

俺らが傍にいるようになったきっかけ。



「何もないよ~!?!どうしたの??」


驚いたような困ったような顔をして笑ってた。


「心配してくれてんの~??」

なんて冗談言って。





それからしばらく沈黙が続いて、気まずかった。



急に立ち上がった倖は、「帰るね」

て笑った。



俺は、呼び止めようとして、倖の服を引っ張った。



そこで見てしまったんだ。

あれは、見てはいけないものだった。


俺が知っていいことじゃなかった…。



服が少しはがれて、肩のあたりが見えた。


そこには、やけどの跡と…




大きな傷跡が残っていた。


「放して!!」


倖が言ったけど、俺はそれを無視して
片方の肩も服を剥いだ。



背中一帯に広がる大きな傷跡と火傷の跡。



「放してよ!!」


大声で叫んだあいつは、走っておれの家から飛び出したんだ。



それから数日間は
倖が家に来ることはなかった。



俺は、あの傷跡がどれだけ辛い目にあった傷なのかわかる。


新しい傷もあった。

たぶん今も受けているんだろう…


おれの頭に浮かぶ漢字。

たった二文字なのに、大きく頭に広がる。



““虐待””