最後になぎと会ったのは、4月の中旬だった。
その時にはもう個室の病室になっていた…
窓辺にかけられた制服…
千羽鶴…
「もう長くないんだって…」
窓辺にかけられた制服をみつめて、涙を流した…
制服の側には、たぶんクラスのみんなからの寄せ書きだ。
“頑張って”
“待ってるから”
“渚なら大丈夫”
ほんと、見守る人も辛い。
それしか言えないんだから…
「ありがとね…
いっぱい話し聞いてもらって」
『そんな事…』
「忘れないでね。私の事」
俺を見たなぎの顔は、とても辛そうだった。
一生懸命、頑張って病気と闘ってきたのに先生は簡単にもうダメだという。
まだ奇跡はあるはずなのに…
『忘れない。』
「良かった…。」
静かに涙を流すなぎを抱きしめる事も、涙を拭う事もできない。
それが出来るのは彼氏だけだ。
なぎはそいつに、生きてる限り会えるよ…と笑って言った。
それが日比野だったなんてな…
「碧斗はもっと笑った方がいいよ…」
そっと俺の頬に触れて言った。
ずるいんだよ…なぎは。
「碧斗…、1人なんでしょう?」
『なんで…』
「わかるよ。
だってずっと寂しそうなんだもん。」
きっと、彼氏もなぎにすぐなんでも気づかれているんたろう。
よく人を見てるんだな…
「いつか、碧斗を楽しませてくれる子が現れる。」
『えっ…』
「だから、もう笑いなよ?」
なぎは涙を拭い、笑って見せた。
笑う…
俺は笑っていいのか?
許されない罪を犯したのに…
「笑顔は大事だよ?
私、まだ碧斗の笑顔見たことないんだから」