小さく震えだす渚の肩に、そっと手を置く…
怖いに決まってる。
もう末期とまで言われてるんだ。
誰だって死という一文字を覚悟するだろう。
『渚…』
「もう私ダメなの。
ほら、髪なんて全部抜けたんだよ…」
渚は被っていたニット帽を外して俯いた。
少し前まで胸元で揺れていた髪はなくなり、もうほとんどが寝たっきりの毎日になっていたんだ。
「真紘…、泣いてるんでしょ?」
『渚なんで知って…』
「それぐらいわかるよ。
真紘、私に無理やり笑顔見せてるんだもん」
そうだ。
真紘は2人で病室を後にすると必ず泣いていた…
静かに涙を流す真紘だけど、たぶん一人切りになると声を上げ泣いていたはずだ。
2人とも、好きな人の前だけでは無理やりでも笑顔でいるんだ。
そして2人とも、一人でたくさん泣いてるんだ。
心配させたくないばかりに…
『真紘、毎日神社行って願ってるんだぜ?』
「え?」