ただ一度だけ、俺の前で泣いた事があった…。


忘れもしない、渚が死ぬ3日前。



中2の5月4日。


桜の花びらが全て落ち、木の葉が緑色に変わりはじめる頃だ…




「真紘…。
私、死ぬのが怖いよ…」




渚は雨空をみつめて、涙を流していた…


胸下で揺れていた髪はなくなり、

手首もかなり細くなっていた。




「真紘…」





俺は泣き続ける渚を後ろから抱きしめる事しか出来なかった。


肩を震わせて泣いて、俺の名前を呼ぶ渚…


曇り空だけでも気が重く感じるのに、よけいに空気が重苦しかった。


そんな中、奇跡が起こったんだ…ー