「真紘…?」
気づけば泣いていた俺の頬にそっと手を当ててきた渚…
「ねぇ、知ってる?
涙ってね、人が泣く最初の一滴が
右目から流れたら嬉しい時で
左目から流れたら悲しい時なんだって」
渚があの時、俺の涙を拭ってくれた手はとても温かかった。
生きてる人間の温かさだった。
その温かさがこれから奪われようとしていくのが辛かった。
本当に泣きたいのは渚の方なのに…
その日から渚は「ねぇ、知ってる?」と言っては、俺に色々な事を話してくれた。
その中で多かったのが虹だった。
「虹ってね、キリスト教では
“神様との契約”だったり
“約束の微”を意味するんだって」
「虹って中国では蛇って言われてるんだって」
と、虹についての知識は全て渚からだ。
雨がやんで晴れた時に、運が良ければ虹が見える時がある。
七色に輝く虹…
虹の話をしている渚の笑顔が、とくに輝いて見えたんだ。