電車で、また柚花さんと遭遇した。

柚花さんは俺を見て逃げようとした。

「待って」

手を掴んだ。

柚花さんは驚いてこちらを見た。

「離して…」

か弱い声でそう言う彼女。

「なんで俺を避けるの?」

「私、言った。嫌いになってって」

「俺は嫌いになるつもりはない」

「…っ!なんでよ!」

「なんでも。ただ、どうして嫌いになれとか言うんだよ。なんかあんのか。
その、過去に…」

そう言うと彼女は怯えた目をした。

「…樹坂君…」

「何?」

「ごめんね、私、弱い子なの。
だから…ごめんね」

「え?」

「どうしても言えないの」